こんにちは!
今、多くの開発現場で使われているTypeScriptの型システム。その中で便利な「infer」について解説します。
もしかすると、そんな疑問や不安を抱えているかもしれませんね。
この記事では、inferについて、基本的な概念から応用的な使い方までを詳しく解説していきます。
この記事は、以下のような方におすすめです。
- TypeScriptのinferがどんなものか知りたい方
- 条件型(Conditional Types)の理解を深めたい方
- 複雑な型定義をもっとシンプルに書きたい方
- TypeScriptの型推論の仕組みを使いこなしたい方
この記事を読めば、inferの基本から応用までを理解できるだけでなく、実際に自分のコードに取り入れられるようになるでしょう。さらに、型推論を活用した高度な型定義のテクニックも身につけることができます。
「TypeScriptをもっと深く理解したい!」「inferの使い方をマスターしたい!」と考えているあなたは、ぜひ最後まで読んでください。
それでは、順を追って詳しく見ていきましょう!
inferとは何か?
まずは、TypeScriptにおけるinferとは何か、その基本的な概念を理解しましょう。
inferの役割
inferは、TypeScriptの条件型(Conditional Types)の中で使用され、型の一部を抽出または推論するために使われます。簡単に言えば、「型の中から特定の型情報を取り出す」ための機能です。
このキーワードは直訳すると「推論する」という意味を持ち、その名の通り、TypeScriptの型システムに対して「ここの型を推論して、その結果を使わせて」と指示するものです。
特に、inferは条件型のextends
キーワードと一緒に使われることが多く、「ある型が特定の形式を持っていたら、その一部を抽出する」という処理を可能にします。
条件型とinferの関係
inferを理解するためには、まず条件型について知っておく必要があります。
条件型は、JavaScriptの三項演算子(condition ? trueValue : falseValue
)に似た構文を持ち、型レベルで条件分岐を行います。
type Result<T> = T extends string ? 'string型です' : '他の型です';
// 使用例
type Test1 = Result<string>; // 'string型です'
type Test2 = Result<number>; // '他の型です'
inferは、この条件型のextends
句の中で使われ、条件にマッチした部分の型を変数として取り出す役割を果たします。
例えば、配列型からその要素の型を取り出す例を見てみましょう。
type ArrayElementType<T> = T extends Array<infer E> ? E : never;
// 使用例
type StringArray = ArrayElementType<string[]>; // string
type NumberArray = ArrayElementType<number[]>; // number
この例では、T
がArray<何らかの型>
という形式を持っていれば、その「何らかの型」をE
として取り出し、そうでなければnever
を返します。
なぜinferが必要なのか
TypeScriptで開発をしていると、「ある型から特定の情報を取り出したい」というケースが頻繁に発生します。例えば:
- 関数の戻り値の型を取得したい
- オブジェクト型の特定のプロパティの型を取得したい
- タプル型から特定の位置の要素の型を取得したい
これらの問題は、inferを使わなければ解決が難しかったり、冗長なコードになってしまったりします。inferの登場により、これらの操作がエレガントに書けるようになりました。
inferの基本的な使い方
それでは、inferの具体的な使い方を見ていきましょう。
配列要素の型を取得する
先ほど少し触れましたが、配列から要素の型を取得するのはinferの基本的な使い方です。
type GetArrayElementType<T> = T extends (infer U)[] ? U : never;
// 使用例
type StringType = GetArrayElementType<string[]>; // string
type NumberType = GetArrayElementType<number[]>; // number
type MixedType = GetArrayElementType<(string | number)[]>; // string | number
このコードでは、T
が何らかの型の配列
であれば、その「何らかの型」をU
として取り出しています。
関数の戻り値の型を取得する
関数型からその戻り値の型を取得するのも、inferの代表的な使用例です。
type ReturnType<T> = T extends (...args: any[]) => infer R ? R : any;
// 使用例
function getMessage() {
return "Hello, TypeScript!";
}
function getCount() {
return 42;
}
type MessageType = ReturnType<typeof getMessage>; // string
type CountType = ReturnType<typeof getCount>; // number
このように、関数型T
から戻り値の型R
を抽出できます。実は、このような便利な型はTypeScriptに標準で組み込まれていて、ReturnType
という名前でまさにこの機能を提供しています。
関数の引数の型を取得する
関数の引数の型を取得することも可能です。
type ParamType<T> = T extends (param: infer P) => any ? P : never;
// 使用例
function greet(name: string) {
return `Hello, ${name}!`;
}
function process(value: number) {
return value * 2;
}
type GreetParam = ParamType<typeof greet>; // string
type ProcessParam = ParamType<typeof process>; // number
複数の引数を持つ関数の場合は、次のように書くこともできます。
type FirstParam<T> = T extends (first: infer F, ...rest: any[]) => any ? F : never;
// 使用例
function combine(str: string, num: number) {
return str + num;
}
type FirstArgType = FirstParam<typeof combine>; // string
プロミスの結果型を取得する
Promise型から解決値の型を取得するのもinferの一般的な使い方です。
type PromiseValueType<T> = T extends Promise<infer V> ? V : never;
// 使用例
async function fetchData() {
return { id: 1, name: "TypeScript" };
}
type DataType = PromiseValueType<ReturnType<typeof fetchData>>;
// { id: number; name: string; }
このように、Promise型からその解決値の型を抽出できます。これも標準でAwaited
という型が提供されています。
オブジェクトのプロパティ型を抽出する
オブジェクトの特定のプロパティの型を抽出するのにもinferが役立ちます。
type PropertyType<T, K extends keyof T> = T[K];
type User = {
id: number;
name: string;
age: number;
};
// 使用例
type IdType = PropertyType<User, 'id'>; // number
type NameType = PropertyType<User, 'name'>; // string
実はこの例では直接inferを使っていませんが、TypeScriptの索引型アクセス(indexed access types)を使って同様の機能を実現しています。
inferを使った例も見てみましょう。例えば、オブジェクトの特定のプロパティが存在する場合にその型を抽出する、といったことが可能です。
type ExtractNameProperty<T> = T extends { name: infer N } ? N : never;
// 使用例
type UserName = ExtractNameProperty<User>; // string
type NoName = ExtractNameProperty<{ id: number }>; // never
タプルから特定の位置の型を取得する
タプル型から特定の位置の要素の型を抽出することもできます。
type FirstElement<T> = T extends [infer F, ...any[]] ? F : never;
type SecondElement<T> = T extends [any, infer S, ...any[]] ? S : never;
// 使用例
type Tuple = [string, number, boolean];
type First = FirstElement<Tuple>; // string
type Second = SecondElement<Tuple>; // number
複数の型を一度に抽出する
inferは複数の型を一度に抽出することもできます。
type PairTypes<T> = T extends [infer A, infer B] ? [A, B] : never;
// 使用例
type Pair = PairTypes<[string, number]>; // [string, number]
さらに複雑な例として、オブジェクトの複数のプロパティの型を同時に抽出することも可能です。
type ExtractUserInfo<T> = T extends { id: infer ID; name: infer Name }
? { extractedId: ID; extractedName: Name }
: never;
// 使用例
type UserInfo = ExtractUserInfo<User>;
// { extractedId: number; extractedName: string }
inferの高度な使い方と応用例
ここからは、inferのより高度な使い方と応用的な応用例を見ていきましょう。
再帰的な型の定義
inferは再帰的な型定義と組み合わせることで、複雑なデータ構造の型も扱えます。
type NestedArrayElement<T> = T extends (infer U)[]
? NestedArrayElement<U>
: T;
// 使用例
type Simple = NestedArrayElement<string>; // string
type OneLevel = NestedArrayElement<string[]>; // string
type TwoLevels = NestedArrayElement<string[][]>; // string
この例では、どんなに深くネストされた配列でも、その最終的な要素の型を取り出すことができます。
型の変換と操作
inferを使って型を抽出した後、その結果を加工することもできます。
type TransformObjectProps<T> = T extends object
? { [K in keyof T]: T[K] extends string ? number : T[K] }
: T;
// 使用例
type UserWithNumberName = TransformObjectProps<User>;
// { id: number; name: number; age: number; }
この例では、オブジェクト型のプロパティのうち、string型のものをnumber型に変換しています。
条件型と共用体型(Union Types)の組み合わせ
inferは条件型と共用体型(Union Types)を組み合わせて使うことで、より柔軟な型操作が可能になります。
type ExtractStringOrNumber<T> = T extends string | number ? T : never;
// 使用例
type ValidType = ExtractStringOrNumber<string | number | boolean>; // string | number
type InvalidType = ExtractStringOrNumber<boolean>; // never
より複雑な例として、型の配列から特定の型だけを抽出することもできます。
type FilterTypes<T, U> = T extends U ? T : never;
// 使用例
type NumberOrBoolean = FilterTypes<string | number | boolean, number | boolean>;
// number | boolean
実際のユースケース:APIレスポンスの型定義
実際の開発では、例えばAPIレスポンスの型定義にinferが役立つケースがあります。
type ApiResponse<T> = {
data: T;
status: number;
message: string;
};
type ExtractApiData<T> = T extends ApiResponse<infer D> ? D : never;
// 使用例
type UserResponse = ApiResponse<User>;
type ExtractedUser = ExtractApiData<UserResponse>; // User
このように、APIのレスポンス型から実際のデータ部分の型だけを抽出することができます。
inferを使ったユーティリティ型
TypeScriptには、inferを活用した便利な組み込みユーティリティ型がいくつか用意されています。これらを理解しておくと、日々のTypeScript開発が格段に便利になります。
ReturnType
ReturnType
は、関数型からその戻り値の型を抽出するユーティリティ型です。
// 使用例
function fetchUser() {
return { id: 1, name: "Alice" };
}
type User = ReturnType<typeof fetchUser>; // { id: number; name: string; }
このユーティリティ型は、APIの戻り値の型を取得したり、別の関数の結果を処理する関数を作成したりする際に非常に役立ちます。
Parameters
Parameters
は、関数型からそのパラメータの型をタプルとして取得するユーティリティ型です。
// 使用例
function createUser(id: number, name: string, isPremium: boolean) {
return { id, name, isPremium };
}
type CreateUserParams = Parameters<typeof createUser>; // [number, string, boolean]
type FirstParam = CreateUserParams[0]; // number
これは、既存の関数と同じパラメータを受け取る新しい関数を作りたい場合などに便利です。
Awaited
Awaited
は、Promise型からその解決値の型を取得するユーティリティ型です。TypeScript 4.5から導入されました。
// 使用例
async function fetchData() {
return { success: true, data: [1, 2, 3] };
}
type FetchResult = Awaited<ReturnType<typeof fetchData>>;
// { success: boolean; data: number[] }
ネストされたPromiseも適切に処理できる点が特徴です。これは、非同期処理の結果を型安全に扱いたい場合に非常に役立ちます。
Partial
Partial
はTypeScriptの型操作において非常に便利なユーティリティ型です。
// 使用例
interface User {
id: number;
name: string;
email: string;
}
type PartialUser = Partial<User>;
// { id?: number; name?: string; email?: string; }
Partial
は、型のすべてのプロパティをオプショナル(省略可能)にします。これは、更新操作用のオブジェクト型など、一部のプロパティだけを持つオブジェクトを表現する場合に便利です。
function updateUser(userId: number, updates: Partial<User>) {
// ユーザーを更新する処理
}
// 名前だけを更新
updateUser(1, { name: "Bob" });
これらのユーティリティ型を使いこなすことで、TypeScriptの型システムをより効果的に活用できるようになります。
【付録】さらに学びを深めるためのリソース
intersection型について理解を深めたところで、さらに学習を進めたい方のために、いくつかのリソースを紹介します。
これらのリソースを活用することで、TypeScriptの型システムについてより深い知識を得ることができるでしょう。
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まとめ
ここまで、TypeScriptのinferについて詳しく見てきました。改めて、重要なポイントをおさらいしましょう。
ポイントは以下の通りです。
- inferは条件型(Conditional Types)の中で使用され、型の一部を抽出・推論するためのキーワードである。
- 配列要素の型取得、関数の戻り値や引数の型取得、Promiseの結果型取得など、様々な場面で活用できる。
- オブジェクトのプロパティ型抽出やタプルの特定位置の型取得など、より複雑な型操作も可能。
- 再帰的な型定義や型の変換・操作など、高度な使い方もある。
- 実際の開発では、APIレスポンスの型定義などに役立つ。
- ユーティリティ型を活用し、可読性と保守性のバランスを取りながら使うことが重要。
TypeScriptのinferは、一見難しく見えるかもしれませんが、使いこなせるようになると型定義の幅が大きく広がります。ぜひこの記事を参考に、自分のコードでも活用してみてください!